温泉・地下水開発調査
SPA/Groundwater Survey
地下水や温泉は地下のどこにでも存在するものではなく、地下水であれば砂礫などの帯水層の中に、温泉であれば地中深くの岩盤亀裂帯の中など限られた場所に存在しています。地下水や温泉のありかは地表から目でみえるものではないので、既存資料の検討および空中写真の判読結果をもとに、現地踏査を行い地形・地質構造を調べた上で、物理探査をおこなって地下の状況を把握します。
弊社では、これまでの調査・工事により蓄積された多くのデータと、専門技術者による地表地質踏査並びに物理探査結果を総合的に解析して地下水や温泉のありかを推定しています。地下水や温泉の井戸掘削前にこれらの調査をおこなうことにより、より確実性が高い開発が可能となります。
調査・開発の一般的な流れ
第一次調査(概査)
既存資料調査
計画地及び周辺域の地形・地質・井戸などの既存資料を収集し、その地域の帯水層や温泉賦存層の情報について整理します。
この結果を地形・地質調査、物理探査、総合解析に活用します。
▲地質図
▲既存資料検討
地形調査
空中写真を立体視し、地形の分類やリニアメント(線状模様)を抽出します。リニアメントは断層、地層境界、褶曲軸、植生境界などによって生じます。
断層破砕帯によるニアメントの場合は、破砕帯に裂か水や温泉水が貯留されることから、重要な要素となります。
▲空中写真の撮影
▲空中写真
▲リニアメント解析例
水理地質踏査
現地を踏査し、沢や道路の法面などに露出している地層を水理地質的な視点で観察します。
地下水を蓄える岩質か?、断層破砕帯はあるか?、リニアメントは断層によるものか?、などを明らかにします。
▲露頭観察(韮崎岩屑流)
▲岩石観察(安山岩溶岩)
▲簡易水質測定(湧水)
以上の既存資料収集検討、地形調査、水理地質踏査により、対象地域の大まかな水理地質構造を調べ、これに基づき第2次調査の手法や範囲を確定します。
第二次調査(精査)
物理探査(電気探査、電磁探査、放射能探査)
電気探査
大地に電気を流し、水平方向・垂直方向の比抵抗の違いを解析し、地質構造を推定します。地下水調査では帯水層の深さや厚さを把握します。また、温泉調査などでは断裂系の検出にも有効です。
電気探査にはいくつかのバリエーションがありますが、弊社では比抵抗法による垂直探査、水平探査および2次元探査を行っています。これらは、比抵抗という地質ごとに特有な電気的性質から地下構造を知る方法です。
垂直探査は地層構造が水平層状構造に近い場合、深度方向の比抵抗分布を探査するのに経済的な方式です。水平探査は簡易的に水平方向の比抵抗分布を調べ、地表近くの地質の不連続性、埋設物、地下水状況などを把握するのに用いられます。2次元探査は垂直探査と水平探査を統合した探査方式であり、測線下の断面の2次元比抵抗分布を調査するもので、複雑な地形・地質条件の場合に有効な探査方法です。
▲垂直探査測定模式図
▲測定器McOHM-EL2
▲垂直探査測定風景
▲2次元探査模式図
▲2次元探査測定器
▲2次元探査電極設置状況
電磁探査
電磁探査法には磁場のみを測定するEM法(Electromagnetic Method)と、電場と磁場の両方を測定するMT法(Magnetotelluric method)があります。
また、測定される信号の成分により周波数領域探査法と時間領域探査法の2つに区分されます。電磁探査では時間的に変動する電磁場を用いて比抵抗構造を調査し、地質構造を推定します。電気探査に比べ、低比抵抗帯の検出に優れています。
断層破砕帯、水脈、鉱脈などの調査には小型軽量で機動性に優れるVLF-EM法(Very Low Frequency-EM Method)を用います。温泉探査の場合は、深部の比抵抗構造まで調査するため、地球電磁気や雷放電により発生する自然電磁場を利用するMT法(10-3~104Hz程度の周波数が対象)や人工信号源によるTEM法(過渡現象電磁探査法)あるいはTDEM法(時間領域電磁法)等が用いられます。
▲VLF-EM解析例
▲VLF-EM探査風景
▲VLF-EM探査器
▲TEM法測定概念図
▲TEM法測定風景
放射能探査
自然界の放射線を測定し、亀裂卓越部を検出します。地下水調査では断層破砕帯などの開口性割れ目の位置を把握するのに用います。
NaIシンチレーションカウンターによって測定の容易なγ線を測定します。γ線の測定は全数をカウントするトータルカウント法と核種ごとに異なるγ線強度を測定するスペクトル法の両方を同時に行います。
探査原理は、地下深部に連なる断層などの亀裂がある場合は、亀裂を伝って深部からラドンガス(222Rn)が上昇してきます。
222Rnはγ線を出さないのでその3つあとの娘核種であるビスマス(214Bi)の出すγ線を測定します。
スペクトル法は、このほかにタリウム(208Tl)とカリウム(40K)を測定しこれらのより安定な核種との比であるBi/TlおよびBi/Kを解析します。
▲放射能探査異常検出模式図
▲放射能探査器
▲放射能探査測定状況
総合解析(地下水/温泉開発可能性の評価、井戸掘削地の選定、掘削仕様の決定)
既存資料調査、地形調査、水理地質踏査および物理探査結果を総合検討し、地下水および温泉の賦存機構を推定し、地下水/温泉の開発可能性を評価します。可能性がある場合は、掘削候補地点を選定し、掘削仕様を決定します。